オレサマのひみつの
しんりゃくニッキ
5月31日
この惑星上の電波の中で、他惑星系住民が発している電波が無いかを分析してみた。
どうも、あることにはあるようだが、相手も同じ状況のようなので、答えないことにした。
相手の方が文明を進化させてくれて、犯罪者になってくれれば、オレサマは楽に帰れるようになるというものだ。
また、にゃっちが持ってきていた虚構の侵略行為の資料でも、また見るとするかな。
5月30日
船の通信設備は、対他恒星系と通信するには出力が低下しているが、この惑星表面上全ての地域をカバーできる程度には出力がある事が判明した。
とりあえず、他惑星系住民の呼びかけがないかどうか、緊急信号発信時間になったら受信レベルを上げて通信内容を分析する予定だ。
だが、この地域は始終微弱ではあるが、電波が飛び回っているので聞き取れない可能性もある。何度か試すことにしておこう。
5月29日
自分の船に久しぶり戻った。自分の船の通信設備の調子をみるためだ。
もしかしたら、この惑星に来ている他惑星人と接触できるかもしれない。
だが、事故でこの惑星に来たからといっても、我が星系と敵対関係にある星系出身のモノが連絡をしてきたとしたら、どうしたらいいものか。
シカトするか?
5月28日
にゃっちが言っていた、他恒星系宛通信設備を見に行ってみた。
貧弱だ。これでは出力も足りないし、返信が来るのもかなり遅くなるであろう。しかし、このような試みが15年ほど前に行われたという事が驚きだ。
もしかして、他にもこの惑星上に他惑星人が事故で来ているのではないだろうか。
5月27日
侵略の最終目的について、にゃっちと相談。にゃっちは「だったらアメリカにある通信設備を利用したら」という。なんでも、太陽系以外の恒星系にむけて通信電波を発信した事があるのだそうだ。
「返事は来たのか?」と聞いたところ、「公式発表ではまだ来ていないことになっている」という話。
こっそり返事が来ているかもしれないということか?
5月26日
オレサマの侵略の目的は、船の修理、あるいは他惑星人に連絡をつけ、救出してもらうのが基本目的だ。
侵略によってこの惑星の技術力を向上し、船の修理あるいは通信を行なうのだ。しかし、侵略行為も技術力の向上も、オレサマが自発的に関わっている事が、銀河系の星系警備隊にわかると犯罪者扱いをまぬがれない。
助かりたいからという理由で、処罰されてきた事件を何度も見たからな。まさか、オレサマがその立場になるとは思わなかったが。
5月25日
侵略をテーマにした作品というものが、いかに物量として多いのかがよくわかった。
にゃっちには、これ以上の量の、侵略行為のテキストを用意する仕事を止めさせなければならない。
これからするのは『オレサマの侵略』であって、今までの侵略を踏襲したものではない。
さて、侵略の具体的な目標を考えなくては。
5月24日
ちゃんとした資料の提供をにゃっちに改めて厳命したところ、「虚構の中にも学ぶべき点があるはず」ということで、資料をこのまま継続して見ることになった。
それにしても、1体の敵に対し3人、あるいは5人であたっているものがかなりあるようだ。
侵略する側も、相手が強くなるまで待っていたり、腑に落ちない点が多い。こんな間抜けなことはオレサマはしたくないものだな。
5月23日
侵略をするとそれを阻む団体というものがいるらしい。
他の惑星人がこの惑星の住民の体をのっとったあげく、その他の惑星人の姿になって戦ったりする場合や、侵略して来る側の他惑星人に敵対する立場の他惑星人が、この惑星の住民に技術力を貸与するなどいろいろと、他惑星人が関与している件もあるようだ。
しかし、どうも資料として渡されたものは、この惑星上で想像された物であって、実際の侵略行為の資料ではないと思うのだが。
5月22日
『世界征服はまず練馬から』、『無理なく世界征服の第一歩……市街征服!』
小さい場所から確実に征服していくという姿勢はすばらしいと思うのだが、失敗例らしい。
にゃっちに失敗例の実現しなかった理由をたずねてみた。『技術力と参謀の不在、資金の規模の小ささ』が主な原因ではないかとのこと。
他にも大量な資料をにゃっちは持ってきた。映像資料は1週間しか借りられないので早く見てねとの事。1週間の時間分を超える資料を借りてくるにゃっちもどうかと思うが。
5月21日
侵略の失敗例のテキストをにゃっちがいっぱい持ってきた。
「成功例を見せてくれ」とオレサマがいうと、「今のところこの惑星世界を統一したものは一人もいない」とのこと。
……だからこの惑星は進歩していないのか。
5月20日
にゃっちはオレサマの宗教観について質問してきた。
オレサマもオレサマの惑星でも神という存在を意識したことはない。しかし、運命などについては、生まれた瞬間から詳しく定められているというものがオレサマの所では一般的な考えだ。
その運命の読み解きかたも決まっているし、読み解く者も運命によって決まっていることになっている。オレサマが船乗りになれたのも運命の読み解きによってだ。
事故にあったりしたのは、今となっては運命に書かれていたのかどうかはわからないが、こういう時は読み解きが失敗して、運命の違う枝道に入ってしまった状態になったという。
「すべて運命(さだめ)」……神とは違うものだ。
5月19日
にゃっちと『宗教』についての話をしてみる。
どうも、にゃっちの認識している宗教世界観は『命あるものは全て神』という事らしい。
複数の存在が合一になったりする場合や、神という存在を否定するのも思想の中ではよくあることらしい。この惑星の住民の中には、ただひとつの存在を神として認識し崇拝するものもあるということ、その唯一神としての具象化された姿というものもいろいろあるのだという話をした。偶像というかたちで具象化した姿はないという神もいるそうだ。
祈る方法もいろいろあるそうだ。むずかしい。
5月18日
にゃっちを観察。改造手術後の右手の処置が思わしくなく、再度処置をしたとの事。痛みでうめいている。
侵略計画の話をすると、オレサマの形態が「レイ」とか「火の玉」に似ているので、それを利用して支配を進めればいいのではないかと提案してきた。
「どーせ、神様と呼ばれてて、今の世の中で崇拝されている過去の人物は他惑星人ぽいしさ、全部支配しなくてもすむし、いいんじゃないの?」とのこと。
『宗教』か。だが、依代はどうするのだ。あった方が効果的だと思うのだが。
5月17日
侵略の計画を立てることにした。この惑星の住民は、脱皮したり、改造手術を施すなど、いろいろと情報に網羅されていない事柄があることが判明した。そして、自分の水分子嫌忌性という性質を考えると、自分が直接侵略行為をすることは大変危険である。
それに星系警備隊等がオレサマの信号を見つけて、この惑星に来た時に、オレサマが侵略をしていたら、犯罪者に転落だ。巧妙に身代わりをたて、文明を進化させ、船の修理をさせなければならない。さて、誰をそそのかすかな。
5月16日
にゃっちが右手に白い物体をつけていた。昨日まではなかったものだ。なんでも改造手術を受けたのだそうだ。この惑星の住民は、大抵のものが1−2年に1度程度改造手術を受けるのだそうだ。にゃっちはあんまり改造していない方らしいが、改造がコンパクトでないのが悩みらしい。にゃっちのいままでの最大の改造は『水に浮くようにした事』だそうだ。
すばらしい。改造の中には、防水技術もあるのではないだろうか。
5月15日
マジ外出できない。船に戻るのも無理だ。水分子結晶が空気中に大量に浮遊していて居心地が悪い。にゃっちにオレサマの能力について質問された。
この惑星で、『念動力』と言われている類の能力はあるかという質問だったので、にゃっちの部屋にあるプリン星人に似せた物体を操作した。
にゃっちは、なんだかすごく喜んでいた。「それはゲイになるよー」と言っていたが、辞書に意味されるところのどの『ゲイ』をさしているのか、聞きそびれた。
……どの『ゲイ』なのだろう。おそろしい。
5月14日
オレサマの惑星の言語、生活習慣、この惑星での食事はどうしているのか等をにゃっちに質問された。言語・生活習慣については、条例で禁じられているので「ひ・み・つ」と答えておいた。この惑星においての食事については、たいそうな不安感情を表現していたので、他の生物など蛋白質由来の食事はしていないと答えた。
オレサマが実際摂取しているものは、この惑星の温度。
最近、気温が低い日が続いたりしていないか?
5月13日
今日は通信施設を見学してみた。遠くからも良く見える赤い鉄塔。いろいろな周波が発信されたりしていたのだから、通信施設であろう。それぞれの周波の行く先をたどってみたが、重要な施設と思われる場所にもいくつか通じていたが、大抵はにゃっちがいるような「家庭」という場所にある機器「テレビ」に通じていた。
ということは、情報を発表する時は赤い鉄塔から周波を発信すればいいというとこだな。洗脳電波とか、指示電波とか、オレサマ自身で発信するなら、これを使えばいいわけか?
だが、船からの発信の方が全惑星表面を完全に覆えると思うがな。
5月12日
オレサマが船から戻ってきたら、にゃっちの顔が緑色をしていた。しかも、はがしていた。
この惑星の生物で脱皮行為があるものはたくさんいるとは情報があったが、現地住民にも脱皮行為があるとの情報は記載されていなかったはずだ。
多少の情報モレはあるとは考えられるが、まだこの惑星を観察して日も浅いし、記憶しているだけにとどめようと思う。
5月11日
船の修理を試みる。どうも、飛ぶには飛ぶらしいがコントロールできないらしい。修理に必要な材料がこの惑星では希少なものでないといいが。
ちなみに、燃料になる炭素の高分子結晶体はどうも高価らしい。たかが炭素、なのだがなぁ。
5月10日
この惑星についてから、現地時間でいう何日かがすぎたようだ。その間に何回か水分子結晶体が落ちるのを観察した。
観光パンフレットに滞在禁止と書いてあるだけあって、環境はオレサマにとってかなり危険だ。だが行動範囲を拡大しなければならない。水分子嫌忌性だからといって、いつまでもおとなしくしているわけにはいけない。
ここの文明は、悲しいかなオレサマの船を修理するのは無論、製造は完全にできない水準でしかない。侵略をして船を修理させるためにも、相手のことを良く知らねばな。
5月9日
にゃっちはオレサマを見た時驚かなかったが、なぜかと聞いたら「宇宙人に慣れてるからにゃ」と、答えやがった。他惑星生物学者でもないのになぜ慣れているのか。やはり、ろいっちは他惑星人なのか?なぞだ。
にゃっちにこの惑星に来た理由を聞かれたが「ひ・み・つ」と答えておいた。
この惑星では、質問の重要度によって答えかたのルールがあると、情報には書いてあったからな。
重要になればなるほど質問には、教えてあげないことが礼儀だそうだ。。
にゃっちは不満そうだったが、そんなのを気にするようなオレサマではない。
5月8日
にゃっちと交信。にゃっちはオレサマの呼びかけを、どうもこの惑星にたくさん浮遊している種族「レイ」の呼びかけだと認識していたそうだ。
「レイ」という種族の呼びかけには、答えてはならないという決まりがあり、もし答えると「レイ」という種族の仲間になる場合があるらしい……どうも「死んでいる」状態になる事らしいが、何故死んでいる状態なのに意識があり、「レイ」という種族の一員になるのがいやなのかが、オレサマにはよく認識できない。
そして、にゃっちは他惑星の生物研究学者ではなく、なんらかの連絡手段を持っていないことが判明した。……やっぱり、連絡をとるには侵略行為が一番の近道か?
5月7日
現地住民のにゃっちと交信を試みてみる。
他惑星の生物学者にしてはまったくそんな感じがしないが、もし本当に他惑星の生物を研究していて星系への連絡手段をもっているなら、めっけもんだ。オレサマの星にすぐに帰れる。……んが、にゃっちはにぶい。
なかなか交信に反応しない。どーも、シカトしていやがるくさい。
なんせ、たまにオヤジ星語で話すと爆笑しやがるからな。くそー、ちゃんと反応しやがれ。
未開惑星人のくせに。
5月6日
現地住民の個体名は『にゃっち』というようだ。
もう一体よく現われる個体がいて、それは『ろいっち』と呼ばれている。
ろいっちという個体は、どうも現地住民らしくない感じがしている。にゃっちとはニオイが違うし、同じ現地住民であんなに差が出るものだろうか。
一応、この惑星では1種族につき性は2つが普通らしいが、それにしても容姿が他惑星出身ぽい。もしかして生きて捕獲した「他惑星人」を、にゃっちが飼っているのか?
5月5日
オレサマが滞在している現地住民の家には、不可思議な物体がたくさんある。
他星系の住民の姿に似せた物体が、たくさんあるのだ。
特にたくさんあるのは「サンテ・リオ星系」のプリン星人。壁にはその絵も飾ってある。
翻訳機で絵に書いてある字を解読すると「ポムポムプリン」。プリン星人の王家の名前になった。どーも、わからん。ここの惑星はそんなに文明が発展していないように見えて、こっそり超発達しているのか?そして、この部屋の住民は他星系の住民を研究している生物学者という事なのか?生物学者という感じは全くしないがなぁ。
5月4日
夜は水分子結晶が大量に上空から落下してきた。電気現象も発生していて、なかなか派手な見物だった。結構この惑星も面白いかもしれん。
現地住民の建造物に入ると、水分子の落下から身を守ることかができるのがわかった。
どうやら、現地住民も一応水分子結晶が当たるのは嫌いらしい。8角形のよく分からん物体を、頭上に掲げて行動していたからな。
5月3日
大気中に水分子の存在が増大してきた。船に戻れないレベルになりつつあったので、少しはマシかと思って、現地住民の建造物に入ってみることにした。
現地住民はかなり不便そうな暮らしをしている。なにしろ水分子を大量に含んでいるので、うちの種族のように空中は飛べないようだ。
たまに空中を現地住民の形をしたモノがただよっているが、意志が通じた1体によれば、その状態は「死んで」いる状態だとこの惑星では言うそうだ。
そいつによれば、オレサマは光の粒子が球状に固まっていてみえるので、この惑星では「火の玉」と呼ばれる状態に似ているそうだ。「プラズマ」と呼ばれる場合もあるらしい。
しかし、「死んで」いる状態の方が、ずいぶんと自由に見えて便利だと、オレサマは思うのだけどな。そいつは「死んだ」状態になるときに、後悔があるとこの形態になってしまうのだといっていた。で、後悔って何だ?
5月2日
現地住民を近くから観察することにした。
この惑星の大気は水分子が多いので不快。しかも現地住民は水分子が無いと生きていられないらしい。水分子を含んだ物体にとらわれない、現地住民の姿をしているものがたまに空中に浮遊しているが、それらはなんら論理的な発言をしている存在は無く、水分子の物体に入っているものの方が、マシな発言をしているようだ。
この惑星の観光パンフレットをあらためてみると、滞在禁止種族にうちの種族載っていやがんの。理由は水分子嫌忌性のため。ま、事故だし、大気中の水分子は行動するぶんには問題無いレベルだ。
でも、水分子結晶体が大気中の上部より落下する現象は見たくないな。
5月1日
事故った。
とりあえず近くの文明の有りそうな惑星に降りたのに、原始的すぎた。
幸いなことにオレサマは若いし、うちの種族はここの宇宙でも1.2を争う長寿種なので、ここで過ごしているうちに、実家に帰れる程度に文明が発達するかもしれない。が、さらに事故を重ねて寿命がつきる方の確率が高いと、計算機が出しやがった。
船は多少燃えたが、ずっとがんばれば修理できないほどではない。
食料もたくさんあるようだし、とりあえず、ここの原住民をキリキリ働かせて、文明を発達させて、楽に実家に帰れるようにしよう。

なんだよ、アンタ、見てんなよ。にゃっちのとこにもどれよ